シナリオと小説の違い・特徴を解説!|小説からシナリオへの書き換え実例あり

小説とシナリオの違いについて、シナリオライターの仕事をしつつ小説執筆の活動を経験していた立場から言いますと、表記形式が違うというポイントに尽きます

普段から小説を自作している方は、『ソーシャルゲームのシナリオライティングも普通にできるのでは?』と思うかもしれませんが、実際のところ、シナリオの書き方を知らないと執筆は難しいでしょう。

私は昔、未経験だった頃はシナリオライターの求人に応募しました。しかし、最初はシナリオも小説も同じようなものだと勘違いしていたので、オリジナルで書いたシナリオは拙いものでした。

その後はシナリオに関する参考文献や、業務委託で実際にライティングの案件をもらう時の資料などを読み込み、ソーシャルゲームなどで通用するシナリオの価値基準を学びました。今回はシナリオと小説の違いをまとめつつ、シナリオの特徴について紹介していきます

▼質の良い求人案件をもらえる!▼

小説とシナリオの違いを実例で紹介|表記形式が大きく異なるポイント

小説とシナリオの違いですが、小説は台詞とそれ以外(地の文)で構成されており、登場人物の様子や場面状況など、地の文における語り手(一人称、二人称、三人称のいずれか)が補完します。

それに対し、シナリオには必ず音声で語る演者もしくはゲームのキャラクターがいるため、台詞(セリフ)が重視されるのです。ドラマや舞台などのシナリオでは一部、地の文(説明者)であらすじが語られる場合があるものの、大抵の場合はキャラクター(演者)の台詞で状況な心理描写を描きます。

※シナリオにおけるフォーマットは、こちらのゲームシナリオでのポートフォリオ例で解説しています。

小説とシナリオの表記を比較!|小説の場合

試しに小説とシナリオの表現の違いについて、カクヨムで掲載している『反世界』という自作小説を基に実例を出したいと思います。

<小説表記>

わたしはその日、定例になっている伊東さんとの打ち合わせで出かけていた。場所はいつもの、ファミレスで。平日の昼間、老人達の無駄な時間がドリンクバーで延々と消化されていく不毛な地であるが、わたしにとっての時間はいつも特別なものであった。

予定時間より10分遅れてファミレスに入ると、定位置になっているすみっこの禁煙席で彼女ーー伊東さんはお冷を飲んでいた。

「お待たせしました。すみません、社内会議が長引いてしまいまして」

「いいえ。お気にせず」

表情一つ変えず、淡々とした返事だった。彼女はいつもそうだった。感情の起伏が読み取りづらく、彼女の両隣にいつもいる二体の猫の人形と同じく喜怒哀楽がない。

「ミュートリアとニャオデリカ、二人ともぐっすり寝ていましたので大丈夫です」

大丈夫でないのはあなたが見ている世界なのですが、と言いたいところだが、彼女は本気で猫のぬいぐるみを『生きているもの』だと認識している。

それでも、ライターとしての記事制作案件はいつも納期を守り、高品質のコンテンツを提供していれているので、今でもこうして仕事としてのつながりがあったのだが、彼女の奥底にある真意は全く謎であった。

(終)

といった感じで小説があったとして、これをシナリオ形式に変換したいと思います。

小説とシナリオの表記を比較!|シナリオの場合

シナリオ形式にする場合、表記だけでなく伝え方にも工夫が要りますので、各キャラクターのセリフも調整します。

<シナリオ表記>

//黒一色 //SE電車の停止音

今日は伊東さんと、仕事の打ち合わせ。
いつものファミレスに向かう。

//ファミレス・昼間

【主人公】(予定より10分遅れちゃった…)

いつものすみっこの席に、伊東さんがいた。

//CG詢子、立ち絵(普通の表情)

【詢子】「…」

【主人公】「遅れてすみません。社内会議が長く…」

【詢子】「いいえ。お気にせず」

彼女は今日も、いつもの調子だ。
顔色一つ変えない。

【詢子】「この子達も寝ていたので、大丈夫です」

//CGミュートリア・ニャオデリカ、立ち絵

【主人公】(寝ていた…か)

伊東詢子は本気で、この人形を生物だと認識している。
本当に大丈夫なのは、どちらだろうか…

でも、ちゃんと仕事してくれからいっか、と思える。
そんなわたしは仕事第一主義なのかな。

(終)

こんな感じで、わりと説明を省いて最小限の表現に留めます。シナリオライティングの特徴や違いなど、以下で詳しく見ていきましょう。

▼質の良い求人案件をもらえる!▼

シナリオと小説の違い・特徴1|ゲームシナリオは基本読み返してくれない

小説を読む人

小説との違いとしてゲームシナリオは基本、読み返すことはありません。ソーシャルゲームなどはログで戻ることはできますが、プレイヤーのほとんどは先へ先へとメッセージを進めていくでしょう。

なので、小説みたいな伏線や少し前の話題を出すことは、シナリオでは思うように上手く表現できません。ライター側が解りやすく書いたと思っていても、プレイヤー側は『何の話をしているんだ?』とストーリーが解らなくことがあるのです

私も実際、とあるソーシャルゲームのイベントシナリオを書いたことがあった時に、クライアント(ディレクター)から『話が読み取りづらい』と言われ、勝手に修正された経験がありました。シナリオは文章表現や言い回しも大事ですが、前提として状況を明白に伝えることが求められます。

シナリオと小説の違い・特徴2|万人に受け入れられる文体で!

シナリオと小説の違いについて考える上で、近年において読書の習慣が失われており、小説自体があまり読まれなくなっていることと、ソーシャルゲームシナリオが流行っていることの関連性があります。

文字を目で丁寧に追って、ゆっくりと咀嚼するように読書をする文化から、テンポ良くタップしてサクサクとストーリーを楽しむ…ソーシャルゲームの普及が広まっているのは、若者だけでなく中年層も解り易いシナリオを好んでいるからだと思われます

そのため、ソーシャルゲームのジャンルにもよりますが、やたら重い話や文体を凝ったシナリオはまず書けません。企画で提案しても間違いなく却下されます。何故なら、シナリオは読み手の欲求をダイレクトに満たすことが目的であり、余計な心理描写や抽象化されたストーリーはその妨げになるからです

シナリオと小説の違い・特徴3|キャラクターのセリフ中心で状況を伝える

シナリオの台詞はキャラクターの魅力を引き立てるものであるため、地の文より台詞が優先されます。地の文どころか主人公(プレイヤー)の台詞も一切なく、キャラクターの台詞だけで成立しているシナリオも珍しくありません。

これが小説であれば、まず有り得ないことです。数ページくらいは鍵括弧が連続する場合もあるでしょうけど、まるまる台詞で地の文がない小説って、最早小説ではありませんよね。

ただ、ソーシャルゲームのシナリオは、キャラクターのセリフが連続しても不自然でなく、むしろ地の文(説明文)が多いとテンポが悪く感じるでしょう。そのため、上記で小説からシナリオの変換例でもあったように、地の文を大きく削ったり、キャラクターのセリフや丸括弧での独り言で補完していきます。

特にソーシャルゲームではキャラクターのボイスや動き…ヒロインの魅力などが重視されるので、地の文はほどんと使わないでしょう。私はシナリオライターを志した当初は凄く違和感がありましたが、『小説とは全く別モノなのか』と理解すれば、それなりに慣れました。

まとめ|小説家を目指していた人がシナリオライターになるためには?

小説とシナリオの違いについてご紹介しましたが、これまで自作小説を書いてきた方がシナリオライターを目指すには様々な対応・適応が必要となります。

未経験からのシナリオライターはハードルが高く、シナリオライターへの転職でも解説していますが、ポートフォリオを用意したり業務委託で少しでも業務経験を得るなどの準備をしておくといいですね。

私は紆余曲折あり、シナリオライターからWebライター・Webマーケターといったキャリアチェンジになりましたが、シナリオライターを続けられなった理由としては、思っていたほどゲーム愛がなかったということがありますね。

そのため、普段からソーシャルゲームを楽しんでいるか、というポイントもわりと重要になってきますので、『あまりゲームはしないけどシナリオライターをやりたい』といった漠然とした志望動機では不十分でしょう。

▼ゲームライターの案件あり!▼