新卒1年目のわたしが転職を決断した理由【連載小説4話 -仕事のやりがいがない-】

  • 2019年8月22日
  • 2019年11月13日
  • 小説家

新卒で入社した当初は、先輩方が仕事をこなしている姿に憧れ、やりがいに期待していた人もいるでしょう。ただ、実際に仕事を続けてみるとやりがいを感じることができなく、徐々に転職を考えるケースもありえます

就活生(学生)でいた時と社会人でギャップが生じ、魅力的だった仕事も実際に携わると思い通りのものでなく、『こんなはずではなかった…』と後悔する新卒社員を、小説形式でご紹介していきます。

▶️ 連載小説1話 -朝・満員電車が辛い-

▶️ 連載小説2話 -残業の多さ・無駄な業務-

▶️ 連載小説3話 -給与が低い-

▶︎ 連載小説5話 -人間関係が悪い-

▶︎ 連載小説6話 -将来に対する不安-

新卒1年目は仕事への興味を失い転職したい

わたしが今の会社を辞めたいのは、無駄な業務が多いとか残業とかいろいろ理由はあるが、何より今の仕事が全然つまらなくなってしまったことが、日々のわたしの脳内を転職の二文字で埋め尽くしている

『大手町の店舗リニューアル、日程決まったっけ?』と、コンビニのおにぎりを頬張りながら三代先輩が聞いてきた。

『あれはマネージャーからストップがかかっています』

オフィスのコピー機で印刷を待っていたわたしは、呆れたように答えた。

『ああ、またきまぐれね』

『そういうことです』

三代先輩も納得し、ペットボトルのお茶を一口飲む。

『レンタルオフィスも都内にそんなに需要、あるのかねえ』

『かなり無理して展開してますね。それで、大手町の件は見切り発車して、今になって予算がつかないとか』

『頭の悪い上司ばっかで、みんな苦労ばっか』

三代先輩もわたしも、上層部のレベルの低さに何も期待していなかった。

創業5年で業界内No.1のシェアを獲得した勢いのあるベンチャー、と言われ当時大学生だった頃のわたし。

目を輝かせて会社と共に成長したい、と面接で宣言したのはそう遠くない過去だ。

それが今になっては、誰でもできる貸会議室の企画営業ないし、上層部からの御用聞きというつまらない職種にランクダウンし、果たして今の仕事が他の会社でも応用できるような価値のある経験かどうかすら怪しい。

『大手町の店舗責任者予定の方に、レイアウト案を送りたいんですけど誰でしたっけ?』と、印刷した会議室の間取りを見ながら聞くと、

『候補者は他店舗の責任者代理でいたんだけど、その転職して辞めたってさ』

『またですか』

これは進捗の見えない案件だな、と悟ったわたしはデータで送る予定だった紙面をシュレッダーでかけた。どうせ時間が経てば、上層部の機嫌一つで計画がコロコロ変わるのだから。

新卒1年目の友人も仕事への誇りを失い転職したい

仕事を終えたわたしはいつも、スーパー以外の寄り道をせずまっすぐ家へ帰っていたのだが、今日は珍しく高校時代の同級生と会う約束があった。

『で、女子二人のディナーが中華チェーン店でよかったの?』

中華そばが390円で売られている格安中華料理店へ呼ばれ、席へ着くと同級生の様子の変化にすぐ気づいた。

『たまにはこういうチープな中華、いいじゃん』

『金森らしくないね。高校生の時は背伸びして、1,500円くらいのパスタランチセット食べてたのに』

同級生の金森は、シワの目立つスーツを投げ捨て暑そうに手でパタパタとあおいだ。

『そんな昔もあったね。でも社会人になってからはコスパ重視だから』

『わかる。それで、わたしを呼んだのは仕事の愚痴か?』

『ーーそう。転職したいんだけどさ』

金森の言葉に、ぬるい水が入ったグラスへと伸びていたわたしの手が止まる。

『そっか。銀行はきつい?』

『もうやだ。就活生だった頃の私に対して、全力で恨んでいるよ。お年寄りを騙して金稼いでいるようなもんだよ』

まだ半年も経ってないんだから早いよね、とか…だけど耐えられないから来月から転職サイトとかエージェントを使って面接を受けるつもり、などその後も金森は元気のない声で語っていたが、わたしの耳には大半届いていなかった。

ーーわたしも現実から目を背けず、今の状況をなんとかしなきゃ。

彼女の悩みはわたしの悩みであり、自分が生きている意味を見出せる仕事を探す時が来ている。決意の思いが徐々に強くなり、頑張ろうと決めた瞬間、喉を通った安っぽいラーメンが妙に美味しく感じた。

第5話に続きます